一厘 ichirin

手仕事による和雑貨と、ぬくもりのライフスタイル

一厘の思い。受け継ぐもの、伝えつづけたいもの。

一厘の思い。 秋田県由利本庄、東由利の里に「積層箸」の工場を訪ねた一厘チーム。 このチームのメンバーは、東京の十条を拠点とするタツミ産業・家庭用品部のスタッフ。タツミ産業は北海道から大阪まで支社を展開し、自社の物流センターも持つ包装業界の総…

積層箸の製造工程

トーホクさんの生産能力は一日に1万5千膳。 工場での機械を使った大量生産とはいえ、その工程の多くには人の手が入る。地元のおばさんたちも、がんばっている。 切り出し 積層材をカット。実演していただいたのは副工場長の工藤さん。 ブロック状の材料を…

積層材の箸とは?

積層材、集成材、合板のちがい 積層材は複数の木片を接着剤で貼り合わせて作った木材である。 元となる材料が一片数センチの木片だと「集成材」、数ミリの薄い板状だと「積層材」や「合板」になる。 積層材と合板の違いは、貼り合わせる板の繊維方向。交互に…

紅葉の由利本庄に、積層材の箸メーカーを訪ねて。

由利本庄は秋田県南部、日本海側に位置し、南北に酒田街道、東に本庄街道・矢島街道が貫き、古来から交通の要衝であった。平成の市町村大合併で生まれた由利本荘市の面積は、神奈川県の半分に相当し、秋田県下でも最大。 石沢川に沿って走る本庄街道をさかの…

図書館製本の真骨頂

16世紀のヨーロッパの書物をエルビーエスで復刻した本。デザイン性の高さに目を奪われる。 補修も仕事。 前段では図書館製本のうち「造本工程」を論文製本の例を用いて見てきた。 一方、長い年月を経て傷んだ完成本を補修したりリメイクする作業も図書館製本…

図書館製本の工程

複数の本をまとめて締めるときに使う「金輪(かなわ)」。角板(つのいた)とセットで使う。 綴じる。 かがり綴じ(糸綴じ)は、8ページ程度にまとめた折丁(おりちょう)を一折りずつ糸で綴じ合わせ背固めする図書館製本の王道ともいえる製法。くり返され…

東工大のお膝元で。現代の製本師(東京都大田)

技術系・最高学府のある町で。 東急線大岡山駅を出ると、奇妙な造形の建築物が目に飛び込んでくる。門は開かれ、学生たちがのびやかに歩く明るいキャンパス。ここが技術・理工系の最高学府として日本のマサチューセッツ工科大学にも例えられる東京工業大学で…

貴族社会の製本師と、現代の製本師

屋敷住み込みの製本師。 かつてフランス・イギリスを中心に欧州には製本師と呼ばれる人たちがいた。 製本師が仕えたのはおもに貴族階級。屋敷に住みこみ、その職は子、孫へと代々、引き継がれる。 現代では製本という仕事は馴染みが薄い。本はどこでも手に入…

分業との決別。親子二代の挑戦(越前・土直漆器)後編

(写真:越前漆器の里・河和田の町なみ) 【・・前編からつづく・・>前編はこちら】 業務用漆器で国内80パーセントのシェアをもつ越前漆器の産地、福井県鯖江市河和田。 業務用に求められる耐久性とコストパフォーマンスを兼ね備えつつ、樹脂やウレタンの合…

越前漆器・製作工程(3)上塗り・加飾

中塗り一年、上塗り一生。 中塗りを経て、塗りの最終工程となる上塗りは全体の仕上がりをチェックする検品も兼ね、もっとも熟練を要する。 担当している佐々木大輔さんは若手のホープ。服飾の勉強をし、その業界から転職してきた努力の人。下地、中塗りを経…

越前漆器・製作工程(2)下地

布着せから、錆付け、そして錆固め 業務用の漆器に求められるのはコストだけではない。要求される強度と耐久性は、一般家庭用の比ではない。構造的に弱い部分、ぶつけやすい部分、傷つきやすい部分には「布着せ」といって、麻布や寒冷紗を糊漆(のりうるし)…

越前漆器・製作工程(1)木地固め

へら削り。 塗りのすべてはここからはじまる。見習いさんが最初に習うのも、ここから。一日、何十本も、ひたすら削る。 木べらは塗りの第一工程である「下地」に使う道具。 木べらに用いられる二レの木は、下地づくりに欠かせない適度な反発力としなりを持つ…

分業との決別。親子二代の挑戦(越前・土直漆器)前編

分業との決別 漆器の生産工程は大きく分けて、木地(素地)、塗り、加飾(蒔絵・沈金など)の三段階がある。かつては地域ごとに、これらの各工程を家庭内手工業として分業させ、産地問屋がプロデューサーとなって生産管理、流通を取り仕切っていた。 先に述…

業務用漆器という活路(福井県・越前漆器)

いにしえには日本を代表する輸出品であり「ジャパン」の訳語も与えられた伝統漆器だが、現代はまさに受難の時代といえる。ライフスタイルの変化による需要の低迷と、職人の高齢化、後継者難といった構造的な問題は根深い。 多くの産地が今、存亡をかけて戦う…

弁当忘れても、傘忘れるな(石川県山中)

天気予報は晴れだった。 雨が降っている。山中温泉。 ときどき、ざあっと、旅館の部屋にいてもちょっと身構えてしまうほどの音を立てる。新緑の沢から立ちのぼるごうっという唸りとまじって渓谷に響き渡り、すさまじいことこの上ない。 「弁当忘れても、傘忘…

取材メモ(山中・鯖江)

漆に関して。 ため塗り・・ 漆は内側から乾燥し、ウレタンは外側から乾燥する。 9.5部艶・・艶が少し引けた状態。この控え目さが漆の美しさ。 目止め・・すり漆(すりこむ)、ふき漆(ふきとる) 山中では、ケヤキが主。仕上げはすり漆。 飛びカンナ・・山中…

山中の木地職人をたずねる〜中出博道さん

作り手の個性ではない。挽き出すのは、木の個性。 木地師は大きく分けて3つに分類される。 薄く削いだ板を巧みに曲げて加工する曲物師(まげものし)、釘を使わずに木材の加工と組み方によって箱物をつくる指物師(さしものし)。3つめが、椀といった丸物…

木が、動く。(人間国宝・川北良造)

「木はいつまでたっても生きているんです。だから動く。でもあまり動くと、工芸品には向きません。木にすれば動くのは本質的なことなのに、人間さまのつごうで動かないでほしい、と相反することを要求しているわけです。木に対して申し訳ないと思います」 (…

温泉が育んだ進取の精神・・山中のとりくみ

石川県には3つの漆器産地がある。 まず、思い浮かぶのは輪島塗りだろう。小学生のとき社会の資料集でその美しい漆器を目にした人も多いはずである。 次に兼六園をはじめとした加賀百万石の絢爛豪華なイメージの金沢。そのイメージと違わず、金沢は「蒔絵(…

山深い温泉街が「JAPAN」に光明を灯す

英単語「JAPAN」のもうひとつの意味をご存じだろうか。なんと「漆器」である。 なぜ「JAPAN」が「漆器」なのか。「CHINA」が「陶器」を意味するのと同じように、英語圏の人たちにとって日本の漆芸の完成度はそうとうなインパクトをもって受け入れられ、明治…

山中漆器のルーツ(後編)蒔絵の技術を獲得した、漆器商の健脚

石川県山中温泉町を見おろすように立つ医王寺。現在はバイパスが目の前をとおっている。寺門の前に立派な石碑が立っている。そこに刻まれた文字は「会津屋由蔵」と読める。 時は江戸時代。天保の改革のただ中にさかのぼる。 年季が明けひとりだちしたばかり…

山中漆器のルーツ(前編)木地

山中における漆器生産のルーツをさかのぼってみよう。 それは安土桃山時代の天正年間(西暦1573-1592)にさかのぼる。太閤秀吉が全国統一を成し遂げていく、まさにそのころのこと。良材を求めて諸国山林伐採許可状を携えて山という山を渡り歩いていた木地師…

木地の山中が「縦木取り」にこだわりつづける理由

全国にいくつかある産地の中でも、ここ山中だけで行われている特殊な方法がある。「縦木取り」と呼ばれる木材の切り出し方だ。 通常の産地は原木を成長方向にスライスした板材を使うのに対し(横木取り)、山中は輪切りにした材を使う。料理を例にしていえば…

江戸時代の「構」に由来する共同出資の工場 〜材木買い付けから下地まで〜 (山中漆器)

山中漆器連合協同組合は、江戸時代の「構」組織に由来する漆器従事者の集まり。 木地産地として古くから名高い山中の伝統を守るために、今や個人単位では難しい木材の買い付け、ストック、乾燥、ブロック単位の切り出しまでを共同出資の工場で行なっている。…

モノを売るのではなく技術を売る(石川県山中・株式会社たつみや)

「モノを売るのではなく技術を売る。ひいては山中の伝統技術を守っていく」 全国の生活雑貨店やスーパーのランチボックス・コーナーでもおなじみ、定番商品からユニークな商品まで、HAKOYAブランドで全国的に流通しているお弁当箱を製造しているのが、たつみ…

山中温泉。開発したのは、奈良大仏のスゴ腕・総監督

なんと おおきな へいじょうきょう。 懐かしや、西暦710年。「なくようぐいすへいあんきょう」とともに、全国の小学生にもおなじみの奈良時代、聖武天皇のもとで大仏建立にあたった行基という高僧が諸国行脚をしていたとき、加賀の山中であやしげな紫雲に導…

あずき貝(石川県山中温泉)

石川県山中温泉にて、山中漆器の職人さんたちを取材。 山中は字のとおり深い山の中の町だが、日本海も近く、海、山の幸に恵まれている。 昼食に入った懐石料理店で気になった食材は、あずき貝。貝殻についた文様があずきみたい。 全国的な漆器産地として名高…

木曽ヒノキ箸との250日

ロングターム・インプレッション。 250日経ちました。はやっ。 今回は、木曽ヒノキの、漆塗りの菜箸と、使い捨てのお箸。 家庭に導入して250日、菜箸の方は・・いつのまにやら、従前の竹の丸箸にもどっていた。 原因を考えるに、角張ってるのは使いやすい反…

晩秋の障泥烏賊(あおりいか)

窓の外では北風がうなりを上げている。 小春日和の日があれば霜の降りる朝もあり、そんな行きつもどりつをくり返しながら、季節は着実に晩秋から初冬へと移ろいつつある。 意外に思うかもしれないが、この季節、海に出ることはさほどきつくはない。夏のあい…

木曽ヒノキ・白木箸との二ヶ月

木曽ヒノキの白木の箸と、漆塗りの菜箸。 白木の箸は、握りの部分がシンプルな四角断面で、先端に行くほど八角形になっていく形状。 いちばん最初に使うとき、強いヒノキの香りがする。 食材の香りを打ち消すほどの強い香りだ。これはこれで嫌いではないが、…