一厘 ichirin

手仕事による和雑貨と、ぬくもりのライフスタイル

業務用漆器という活路(福井県・越前漆器)

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 いにしえには日本を代表する輸出品であり「ジャパン」の訳語も与えられた伝統漆器だが、現代はまさに受難の時代といえる。ライフスタイルの変化による需要の低迷と、職人の高齢化、後継者難といった構造的な問題は根深い。

 多くの産地が今、存亡をかけて戦うなか、越前漆器の産地である福井県鯖江市・河和田でひとりの若き二代目経営者が地道な挑戦を行っていた。

 

 

 業務用漆器という活路

 輸入材に押されて良質の国産材は宝石のように入手しがたい存在になって久しい。良材が必須条件となる伝統漆器においては厳しい状況である。林業もまた担い手の高齢化と後継者不足、需要減といった構造的な問題に悩まされている点で伝統産業と変わらない。漆器が抱える問題は日本が抱える問題と同根といえる。

 さまざまな努力もなされている。木の代替素材として樹脂を用い、最新設備を整えた工場での大量生産も可能になった。現在、日常的に使われている漆器の多くはこのタイプのものである。従来の伝統漆器に対して、これら大量生産される漆器は近代漆器(合成漆器)と呼び区別される。

 安価で質のよい合成漆器が発展するにつれ、皮肉なことに伝統漆器の生き残る道はますます険しくなった。今や美術館の中にあるものと思われがちな伝統漆器だが、高度成長期に核家族化が急速に進むまでは日常生活の中でしっかり息づいていた。今、道具としての伝統漆器がかろうじて日常的に活躍している場は料亭や高級宿といった外食産業になろう。ここに狙いを定め業務用として全国8割以上の漆器を生産するまでに成長したのが、越前漆器の産地・河和田(かわだ)だ

 ここでも合成漆器の割合が圧倒的ながら、中には伝統漆器一本でその技術を守りつづけている会社がある。二代目として社業を引き継いだ土田直東さん率いる土直漆器である。

 

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越前・河和田の町なみ

 

 

>越前漆器共同組合オフィシャルサイト

>土直漆器オフィシャルサイト