一厘 ichirin

手仕事による和雑貨と、ぬくもりのライフスタイル

越前漆器・製作工程(3)上塗り・加飾

 

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中塗り一年、上塗り一生。

 

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中塗りを経て、塗りの最終工程となる上塗りは全体の仕上がりをチェックする検品も兼ね、もっとも熟練を要する。

担当している佐々木大輔さんは若手のホープ。服飾の勉強をし、その業界から転職してきた努力の人。下地、中塗りを経て上塗り歴も5年を越える。

 

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「時間が足りないって感じます。仕上げるスピードがまだまだ足りないです」

 佐々木さんがめざすのは、季節や気候の変化によらず、つねに効率的かつ均質な仕事ができる職人だという。

 

 佐々木さんの後ろに見える木戸は「回転風呂」

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 中を開けてもらいました。

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 縫った椀を吊り下げた棒が、軸を中心に7分かけて1回転。さらに7分かけて反対向きに1回転。業務用漆器として耐久性をもたせるためにかなり厚塗りをするので漆が垂れやすい。この回転風呂は漆の垂れを防ぎながら乾燥させるための設備。

 

 

 

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土田直。一級技能士

 

 別の部屋では会長の土田直さんも上塗りをしていた。土田直さんは一級技能士(刷毛塗り)の国家資格を持つ。

 ここは土直漆器の品質を守る最後の砦。長男の直東さんといっしょに、社内一貫生産の態勢を築きあげてきた。土田さんは言う。

「うるしって水もんでしょう。混ぜちゃったら、分からないんですよ」

 厚めの上塗りはより多くの漆を使う。外部に委託すると、高価な漆の使用量を減らそうと混ぜ物をされてしまう恐れがある。社内一貫生産にすることで、使用する漆の品質や調合をすべて自分で管理することができるのだ。

 

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拭き上げに使っているのは、吉野紙の中にティッシュを1枚はさんだもの。

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加飾(蒔絵・沈金)

 

 上塗りが終わった漆器に飾り付けを行う工程が加飾。金粉や金箔、螺鈿などこの工程で扱われる素材は漆器の付加価値を飛躍的に高める。

 これを行う蒔絵師はいわばデザイナーであり絵描きでありアーティスト。蒔絵師・大久保力男(おおくぼりきお)さんの作業場は、土直漆器の社屋でもいちばん奥にある広い部屋。ぴんと張りつめた空気が漂う。

 

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金粉が、舞う。

 

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