檜笠の家にて端緒をつかむ
桧は使えば使うほど焼け色が渋い光を放つようになる。
檜笠の家の中に飾られている桧笠は味わい深い赤味。
商品として並べられている笠はいかにも桧らしいフレッシュな白肌だが、長年使っていると、こういう風合いが出てくるのだと店のおばさんがおしえてくれた。
笠はともかく、桧を編み上げるこの技術を何か現代性のある商品に生かせないかと国分は考えていた。
一方、奥山は店のおばさんに桧を編む技術で小物入れのようなものは作れないか訊ねている。おばさんが店の奥から、売り物じゃないんだけど、と持ってきたものを見て奥山の目が光った。
「この技術があれば・・」
しかし、おばさんは少しさびそうに、たくさん作るのは難しいと言う。笠を編む職人は何人かいるのだが、このような小物を編める職人はひとりしかいないそうだ。
桧製品で網笠以外のものはどこで作っているのか国分が訊ねた。
「付知(つけじ)で作っとります。裏木曽といわれているところです」
裏木曽・・。われわれの次に行くべきところが見えてきた。